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狸に化かされた話 [雑記]



 昨年亡くなった父が生前よく言っていた話です。

 戦後間もない頃に霧島の開拓団に入植した父は山林を切り開いたり田畑を作ったり
していましたが時おり里に出て生活に必要な物資を調達していました。

 隼人、時には県境を越え都城の方まで朝早く家を出て徒歩で行きました。

 当然帰りは、どんなに急いでも夕方近くなりました。

 そして、ある日普段よりも少し遅く帰る事になり家に帰りつくまでに日が暮れてしまいました。

 何しろ山奥の事ですから街灯なんてありません。

 遠くに見える点在する家屋の薄明りしかありません。

 とはいえ住み慣れた土地ですから目をつぶっても帰りつけます。

 自宅の明かりが見え数分もすれば帰り着くくらいになって、しばらく歩くと元の場所に
戻り、いくら歩いても帰り着けなくなりました。

 父は怖くなって大声で家の者に異常を伝えると母親たちが出てきて父の名を呼んで
手招きをしているんですがいくら歩いても元の場所に戻ってしまい埒があきません。

 父は「これは狸に化かされたか」と観念し、その夜は側にある大きな木に登りズボンの
ベルトを外し太い枝と胴体を結び落ちないようにして寝ました。

 夜が明けると父は何事もなかったように家に帰れました。

 このように不可思議な経験をする者が父だけではなく周辺の住民には時たま起こりました。

 父の妹(私からみれば叔母)も近所の大工さんが何かの寄合で酒を飲んでいる時に
手伝いで酒の肴を運んで行くと「狸が化けてでおった」と側にあったノミで刺し殺され
そうになったそうです。

 今はどうか知れませんが70年ほど昔は、そんな感じだったそうです。

 私は、この話作り話ではなく父や近隣の住民たちは本当にそういう体験をしたのだ
と思います。

 それじゃホントに狸が化かした?

 いやいや流石に、それは無いと思います。

 ただ、霧島山系は良質の温泉が至る所で湧きだしているので亜硫酸ガスなんかも
至る所で噴出してるんじゃないかとも思ったりする訳です。

 命には関わらなくとも軽い酸欠で幻覚を見る事もあるでしょう。

 ましてや朝早くから家を出かけ丸一日歩き詰めで、しかも戦後の食糧難の時代ですから
体力的にも厳しく幻覚を見たのかもしれません。

 ※砂漠なんかで遭難した人が遠くに湖やヤシの木の
  幻覚を見るっていうじゃありませんか。

 それと食糧難の時代でしたから山に生えてる毒キノコを食べて軽い食中毒に罹り
幻覚を見た可能性も否定できません。

 当時は食糧難の時代でしたから少々怪しくても食べたかもしれません。


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